メッセージ:02
子ども達と本気で向き合う、プログラボ東京展開の立役者
(取材:2019年2月)

(右から)
石井 圭 (株)JR中央ラインモール 代表取締役社長
1990年、東日本旅客鉄道送(株)入社。主に、社有地の利活用、駅ビルの開発・運営、地域活性化に関する業務に従事。
福島県や宮城県で農業事業を立ち上げるなど、新規事業にも携わってきた。
佐藤 晃 東京地下鉄(株) 企業価値創造部 部長
1988年入社(当時入団)、鉄道部門の電気部において情報通信分野の設計業務、駅務システムの仕様検討業務、電気部全体の管理業務に従事。
(株)パスモにシステム部長として在籍し、ICカードシステムの統轄業務にも従事した。
田中 浩樹 読売テレビ放送(株) メディア企画部 副部長
総合商社にて勤務の後、2004年 読売テレビ放送(株)に入社。
コンテンツビジネス等に従事した後、経営企画室で社内出資制度「プロジェクトY」企画・運営を担当し、プログラボの運営に携わる。

JR東日本グループと東京メトロが手がけるプログラボ

田中:2016年4月に阪神電車と読売テレビが共同で新規事業として立ち上げたロボットプログラミング教室「プログラボ」ですが、2018年4月からはJR東日本グループのJR中央ラインモールと、東京メトロの運営のもと、次々に教室を増やし、2019年4月には首都圏で13教室になる予定です。
本日はJR中央ラインモールの代表取締役社長である石井さんと、東京メトロ企業価値創造部部長の佐藤さんにお集まりいただき、両社がプログラボに取り組む背景や、子ども達への想いを語っていただきます。

石井:JR中央ラインモールは、中央線の沿線価値を総合的に向上することがミッションの会社です。中央線の三鷹~立川間で連続立体交差事業が行われた際に、駅や高架下で地域の皆さまとも連携しながら、一体的な街づくりを行うことを目的に2010年に設立された、JR東日本グループの中でも比較的新しい会社です。
「住みやすい」、「暮らしやすい」、「学びやすい」という3つの要素は街づくりのキーワードです。中央線沿線には学校も多くあり、「学び」に対する意識が高い方も多い。これからの時代の「学び」を提供するプログラボを当社でも取り入れたいと考え、まずは自社施設である「nonowa武蔵小金井」に1号教室を立ち上げました。

佐藤:東京メトロは政府と東京都が株主であり、鉄道事業がほぼ100%を占める会社です。鉄道事業における安全の提供が第一のミッションですが、それだけではなく、お客様ニーズへの対応や関連事業の拡大、新たな事業領域への挑戦を掲げています。
この新たな事業領域への挑戦を担うのが、我々の「企業価値創造部」であり、設立から3年が経ちました。数件の新規事業立ち上げに向けて動いている中、プログラボは第一号案件なんです。プログラボ以外にも様々なロボット教室、プログラミング教室を視察し、比較検討しましたが、「社会で必要とされる人材を育成する」という観点でプログラボを選びました。まずは地下鉄博物館に近く、弊社として思い入れのある葛西に1号教室を立ち上げました。

子ども達の成長を支える、室長たちの本気度

田中:両社とも開校から1年近くが経ちましたが、プログラボに通われているお子さんたちの様子をどうご覧になっていますか。

佐藤:同じロボットを作っていてもそれぞれの個性が出ているんでとても面白いですよね。この子はこういう考えで作っているというのが見ていて良くわかります。

石井:お子さんたちが一生懸命取り組む姿勢を見ていると、子どもだから出来る根気強さや熱気のようなものを感じます。

田中:プログラボの教育理念である「夢を実現するチカラ」というのはスキルだけではない、その奥にある意欲や精神といった人間性を重視しています。東京の教室でもそういったところを感じていただけているなら嬉しいですね。

佐藤:教える側である室長たちの本気度が子ども達にも伝わっているのではないでしょうか。先日、室長の研修合宿を行ったんですが、1号教室である葛西校の室長が「ロボットプログラミングを通じて子ども達にこういうことを伝えたい」という想いを語ってくれたんです。この春新しく開校する教室の室長たちも彼の思いに賛同し、非常に前向きな気持ちを持っているように感じました。2月3日に開催したプログラボ祭りの際、節分に引っ掛けて室長たちが鬼の格好をして登場しましたよね、「子ども達を楽しませよう」という気持ちの表れです。

石井:サポーターの積極性も感じています。中央線沿線の大学に通う学生がサポーターとして授業補助の役割を担っていますが、先日開催した発達障がいに関する勉強会に多くのサポーターが出席し、積極的に講師へ質問していました。こういった想いがお子さんたちに伝われば嬉しいですね。

一緒に働きたい人材を育てる、社会で必要とされるチカラとは

田中:プログラボでは「将来一緒に働きたい人材を育てる」というのも設立当初からの想いのひとつなんです。日本の企業の多くが、新しい価値を生み出すべく新規事業に取り組んでいますが、翻って自社内を見てみるとなかなかそういったことを出来る人材がいないんですね。それならばいっそのこと自分たちで育ててしまおう!と。子ども達に先駆けて社員が成長しているというのは頼もしいですね。

佐藤:私は東京メトロで総合指令所の立ち上げやパスモの導入など、社内の電気部門で新しい取り組みを担う機会に恵まれてきました。技術系の人材採用にも携わってきましたが、やはり安定を求めて入社してくる人材は多く、新規事業に対するリスクをまず考えてしまう人も多いんです。誰もやっていないことは先駆者になれるチャンスなんです。新しいことに対して常に前向きに取り組んでいこうという姿勢が大切だと思います。

石井:私は5年前、地域活性化の一環で福島県いわき市でトマト栽培を行う新規事業を立ち上げたんです。一次産業の担い手がどんどん減っていくという危機感の中、JR東日本として何かできないか、同時に震災復興のお手伝いもできないか、という思いでした。
「日本の家計でもっとも消費量の多い野菜はトマトである」ことなど、様々なデータも活用しながら合意形成を進めました。こういった経験から、自分の仕事や事業に対して熱意を持ち、それを周りに伝えて実現に向けて行動することの大切さを実感しました。

子ども達の将来に向き合う責任、はじめることに対する責任

石井:もうひとつ、私が子ども達に伝えたいのは「正面から正直に向き合う」ということです。私がトマト工場を計画した頃は企業の農業参入が流行っている時期でした。
その反面、うまくいかずに撤退する企業も多く、地権者や自治体など地域の方々からは「だめになったらやめるんでしょ?」と言われることも多々ありました。地域の寄り合いに参加し、膝をつき合わせてお話することで信頼を得たことも。そう思うと、教育も農業も一緒で、いったん始めると責任を持たなければならない、やめずに続けていくことが大事だと思っています。

佐藤:本当にそうですよね、「夢を実現するチカラを育む」この教育は、社会や企業が求める人材像から逆算していくものです。子どもの時間に責任を負う重さを実感しつつ、自分たちも粘り強くやっていきたいと思っています。

田中:2045年には人工知能が人間の知性を超えるシンギュラリティに到達するといわれていますが、社会で必要とされるチカラの本質は変わらないのかもしれませんね。

今後の事業展開と子ども達へのエール

田中:では、最後に両社で考えておられる今後の事業展開と、プログラボで学ぶ子ども達へのメッセージをお願いします。

石井:当社ではプログラボを始めたことで、中央線沿線にお住まいの方々の教育への関心の高さを改めて感じています。沿線価値向上のため、教育という切り口で新しいことに挑戦していきたいですね。
そのためには自分たちだけではなく、様々な領域の事業者様と協力していくつもりです。2号教室の中野校は、この春から東京アスレティッククラブ様のTAC中野に教室を移し、お互いの強みを活かしていこうとしています。子どもたちがよりよく学ぶ環境を作っていくためには、多様性をもった多くの大人たちが手を携えていくことが必要だと考えています。

佐藤:鉄道事業が中心の当社でも新規事業を通じて社員の育つ姿を見ることができましたので、新しい取り組みに挑戦していきたいですね。室長やサポーターの先生たちには、子ども達と一緒に「夢を実現するチカラ」を育んでいってほしいと思います
また、子ども達にはプログラボで様々な経験を積んで、新しいことに前向きにチャレンジできる姿勢を育んでほしいですね。

石井:先日、武蔵小金井校と中野校で保護者の皆様にアンケートを実施しましたが、子どものうちからプレゼンテーションに慣れるというところも評価していただいています。プログラボでの学びは10年後、20年後に子どもたちが社会に出るときに活きるものだと思います。ぜひ熱い思いを伝えられる大人になってほしいですね。